その後姿を見送った鼻蔵人の可笑しさは、大抵御推察が参りましょう。
恵印はどうやら赤鼻の奥がむず痒いような心もちがして、しかつめらしく南大門の石段を上って行く中にも、思わず吹き出さずには居られませんでした。
「その朝でさえ『三月三日この池より竜昇らんずるなり』の建札は、これほどの利き目がございましたから、まして一日二日と経って見ますと、奈良の町中どこへ行っても、この猿沢の池の竜の噂が出ない所はございません。
その後姿を見送った鼻蔵人の可笑しさは、大抵御推察が参りましょう。
恵印はどうやら赤鼻の奥がむず痒いような心もちがして、しかつめらしく南大門の石段を上って行く中にも、思わず吹き出さずには居られませんでした。
「その朝でさえ『三月三日この池より竜昇らんずるなり』の建札は、これほどの利き目がございましたから、まして一日二日と経って見ますと、奈良の町中どこへ行っても、この猿沢の池の竜の噂が出ない所はございません。