「その朝でさえ『三月三日この池より竜昇らんずるなり』の建札は、これほどの利き目がございましたから、まして一日二日と経って見ますと、奈良の町中どこへ行っても、この猿沢の池の竜の噂が出ない所はございません。
元より中には『あの建札も誰かの悪戯であろう。
など申すものもございましたが、折から京では神泉苑の竜が天上致したなどと申す評判もございましたので、そう云うものさえ内心では半信半疑と申しましょうか、事によるとそんな大変があるかも知れないぐらいな気にはなって居ったのでございます。
「その朝でさえ『三月三日この池より竜昇らんずるなり』の建札は、これほどの利き目がございましたから、まして一日二日と経って見ますと、奈良の町中どこへ行っても、この猿沢の池の竜の噂が出ない所はございません。
元より中には『あの建札も誰かの悪戯であろう。
など申すものもございましたが、折から京では神泉苑の竜が天上致したなどと申す評判もございましたので、そう云うものさえ内心では半信半疑と申しましょうか、事によるとそんな大変があるかも知れないぐらいな気にはなって居ったのでございます。