と申してあの建札は自分が悪戯に建てたのだとも、今更白状する訳には参りませんから、恵印もとうとう我を折って、三月三日まではその叔母の世話を引き受けたばかりでなく、当日は一しょに竜神の天上する所を見に行くと云う約束までもさせられました。
さてこうなって考えますと、叔母の尼さえ竜の事を聞き伝えたのでございますから、大和の国内は申すまでもなく、摂津の国、和泉の国、河内の国を始めとして、事によると播磨の国、山城の国、近江の国、丹波の国のあたりまでも、もうこの噂が一円にひろまっているのでございましょう。
つまり奈良の老若をかつごうと思ってした悪戯が、思いもよらず四方の国々で何万人とも知れない人間を瞞す事になってしまったのでございます。