さてこうなって考えますと、叔母の尼さえ竜の事を聞き伝えたのでございますから、大和の国内は申すまでもなく、摂津の国、和泉の国、河内の国を始めとして、事によると播磨の国、山城の国、近江の国、丹波の国のあたりまでも、もうこの噂が一円にひろまっているのでございましょう。
つまり奈良の老若をかつごうと思ってした悪戯が、思いもよらず四方の国々で何万人とも知れない人間を瞞す事になってしまったのでございます。
恵印はそう思いますと、可笑しいよりは何となく空恐しい気が先に立って、朝夕叔母の尼の案内がてら、つれ立って奈良の寺々を見物して歩いて居ります間も、とんと検非違使の眼を偸んで、身を隠している罪人のような後めたい思いがして居りました。