と情けない声で申したきり、さすがに今日は大鼻を鳴らすだけの元気も出ないと見えて、そのまま南大門の柱の根がたへ意気地なく蹲ってしまいました。
「けれども元より叔母の尼には、恵印のそんな腹の底が呑みこめる訳もございませんから、こちらは頭巾もずり落ちるほど一生懸命首を延ばして、あちらこちらを見渡しながら、成程竜神の御棲まいになる池の景色は格別だの、これほどの人出がした上からは、きっと竜神も御姿を御現わしなさるだろうのと、何かと恵印をつかまえては話しかけるのでございます。
そこでこちらも柱の根がたに坐ってばかりは居られませんので、嫌々腰を擡げて見ますと、ここにも揉烏帽子や侍烏帽子が人山を築いて居りましたが、その中に交ってあの恵門法師も、相不変鉢の開いた頭を一きわ高く聳やかせながら、鵜の目もふらず池の方を眺めて居るではございませんか。