これはちと薬が利きすぎた――と思うと、浮いた声も自然に出なくなってしまいましたから、恵印はまた元の通り世にも心細そうな顔をして、ぼんやり人の海の向うにある猿沢の池を見下しました。
が、池はもう温んだらしい底光りのする水の面に、堤をめぐった桜や柳を鮮にじっと映したまま、いつになっても竜などを天上させる気色もございません。
殊にそのまわりの何里四方が、隙き間もなく見物の人数で埋まってでもいるせいか、今日は池の広さが日頃より一層狭く見えるようで、第一ここに竜が居ると云うそれがそもそも途方もない嘘のような気が致すのでございます。