が、見物は相不変、日傘の陰にも、平張の下にも、あるいはまた桟敷の欄干の後にも、簇々と重なり重なって、朝から午へ、午から夕へ日影が移るのも忘れたように、竜王が姿を現すのを今か今かと待って居りました。
「すると恵印がそこへ来てから、やがて半日もすぎた時分、まるで線香の煙のような一すじの雲が中空にたなびいたと思いますと、見る間にそれが大きくなって、今までのどかに晴れていた空が、俄にうす暗く変りました。
その途端に一陣の風がさっと、猿沢の池に落ちて、鏡のように見えた水の面に無数の波を描きましたが、さすがに覚悟はしていながら慌てまどった見物が、あれよあれよと申す間もなく、天を傾けてまっ白にどっと雨が降り出したではございませんか。