耳にはいるのは几帳の向うに横になっている和泉式部の寝息であろう。
春の夜の曹司はただしんかんと更け渡って、そのほかには鼠の啼く声さえも聞えない。
阿闍梨は、白地の錦の縁をとった円座の上に座をしめながら、式部の眼のさめるのを憚るように、中音で静かに法華経を誦しはじめた。
耳にはいるのは几帳の向うに横になっている和泉式部の寝息であろう。
春の夜の曹司はただしんかんと更け渡って、そのほかには鼠の啼く声さえも聞えない。
阿闍梨は、白地の錦の縁をとった円座の上に座をしめながら、式部の眼のさめるのを憚るように、中音で静かに法華経を誦しはじめた。