すると、翁は、黄いろい紙の扇を開いて、顔をさしかくすように思われたが、見る見る、影が薄くなって、蛍ほどになった切り燈台の火と共に、消えるともなく、ふっと消える――と、遠くでかすかながら、勇ましい一番鶏の声がした。
「春はあけぼの、ようよう白くなりゆく」時が来たのである。
(大正五年十二月十三日)
すると、翁は、黄いろい紙の扇を開いて、顔をさしかくすように思われたが、見る見る、影が薄くなって、蛍ほどになった切り燈台の火と共に、消えるともなく、ふっと消える――と、遠くでかすかながら、勇ましい一番鶏の声がした。
「春はあけぼの、ようよう白くなりゆく」時が来たのである。
(大正五年十二月十三日)