むしろ、冷然として、煙管を啣えたり、鼻毛をぬいたりしながら、莫迦にしたような眼で、舞台の上に周旋する鼠の役者を眺めている。
けれども、曲が進むのに従って、錦切れの衣裳をつけた正旦の鼠や、黒い仮面をかぶった浄の鼠が、続々、鬼門道から這い出して来るようになると、そうして、それが、飛んだり跳ねたりしながら、李の唱う曲やその間へはいる白につれて、いろいろ所作をするようになると、見物もさすがに冷淡を装っていられなくなると見えて、追々まわりの人だかりの中から、子大などと云う声が、かかり始める。
すると、李小二も、いよいよ、あぶらがのって、忙しく鼓板を叩きながら、巧に一座の鼠を使いわける。