砲丸は雨よりもはげしい 自分は前部十二吋砲の掛りであつたが敵弾はひし/\と我艦に命中する見る間に後部甲板が打ぬかれた 次で巨弾はブリツヂに命中してその上に立てゐた艦長始二三の士官をいづこへか奪ひさつた 更に次で一弾は機関室をつらぬいた 最後に一発の巨弾は前部甲板をうち竜骨を貫て深く水に入たからたまらない艦は艦首の方から徐に沈みはじめた 弾は漸くに尽きんとし士卒は一人として傷かぬはない今や我石狩の最後である 自分の艦に最接してゐるジヤンバールは信号を以て降参せよとせまる もし降参しなければ一撃の下に撃沈される事は必常であるしさは云へ降参抔とは男子として忍ぶべからざる屈辱でもある
自分は応ずるに「否」なる信号を以てした その信号の完るか完らぬに敵の水雷は半沈みかゝつてゐる石狩の左舷舷側に爆発した もう多く云ふに忍びぬ 艦の運命はそこで完た云々』
時事日報は此識者は石狩分隊長少佐清水昌彦氏なる旨附記せり