――そこで、一船の裸侍は、それ自身が大きな虱のやうに、寒いのを我慢して、毎日根気よく、そこここと歩きながら、丹念に板の間の虱ばかりつぶしてゐた。
所が佃組の船に、妙な男が一人ゐた。
これは森権之進と云ふ中老のつむじ曲りで、身分は七十俵五人扶持の御徒士である。
――そこで、一船の裸侍は、それ自身が大きな虱のやうに、寒いのを我慢して、毎日根気よく、そこここと歩きながら、丹念に板の間の虱ばかりつぶしてゐた。
所が佃組の船に、妙な男が一人ゐた。
これは森権之進と云ふ中老のつむじ曲りで、身分は七十俵五人扶持の御徒士である。