もし夜寒が甚しければ、少し離れた瓦斯煖炉にも赤々と火が動いてゐる。
さうしてその机の後、二枚重ねた座蒲団の上には、何処か獅子を想はせる、脊の低い半白の老人が、或は手紙の筆を走らせたり、或は唐本の詩集を飜したりしながら、端然と独り坐つてゐる。
漱石山房の秋の夜は、かう云ふ蕭條たるものであつた。
もし夜寒が甚しければ、少し離れた瓦斯煖炉にも赤々と火が動いてゐる。
さうしてその机の後、二枚重ねた座蒲団の上には、何処か獅子を想はせる、脊の低い半白の老人が、或は手紙の筆を走らせたり、或は唐本の詩集を飜したりしながら、端然と独り坐つてゐる。
漱石山房の秋の夜は、かう云ふ蕭條たるものであつた。