時々彼が谷川の石の上に、水を掠めて去来する岩燕を眺めていると、あるいは山峡の辛夷の下に、蜜に酔って飛びも出来ない虻の羽音を聞いていると、何とも云いようのない寂しさが突然彼を襲う事があった。
彼はその寂しさが、どこから来るのだかわからなかった。
ただ、それが何年か前に、母を失った時の悲しみと似ているような気もちだけがした。
時々彼が谷川の石の上に、水を掠めて去来する岩燕を眺めていると、あるいは山峡の辛夷の下に、蜜に酔って飛びも出来ない虻の羽音を聞いていると、何とも云いようのない寂しさが突然彼を襲う事があった。
彼はその寂しさが、どこから来るのだかわからなかった。
ただ、それが何年か前に、母を失った時の悲しみと似ているような気もちだけがした。