彼はずるずる若者を引きずりながら、とうとう目ざす小家まで来た。
見ると幸小家の主人は、まだ眠らずにいると見えて、仄かな一盞の燈火の光が、戸口に下げた簾の隙から、軒先の月明と鬩いでいた。
襟をつかまれた若者は、ちょうどこの戸口の前へ来た時、始めて彼の手から自由になろうとする、最後の努力に成功した、と思うと時ならない風が、さっと若者の顔を払って、足さえ宙に浮くが早いか、あたりが俄に暗くなって、ただ一しきり火花のような物が、四方へ散乱するような心もちがした。
彼はずるずる若者を引きずりながら、とうとう目ざす小家まで来た。
見ると幸小家の主人は、まだ眠らずにいると見えて、仄かな一盞の燈火の光が、戸口に下げた簾の隙から、軒先の月明と鬩いでいた。
襟をつかまれた若者は、ちょうどこの戸口の前へ来た時、始めて彼の手から自由になろうとする、最後の努力に成功した、と思うと時ならない風が、さっと若者の顔を払って、足さえ宙に浮くが早いか、あたりが俄に暗くなって、ただ一しきり火花のような物が、四方へ散乱するような心もちがした。