物静な春の夜は、藪木の花のかすかな匀を柔かく靄に包んだまま、ここでもただ梟の声が、ちょうど山その物の吐息のように、一天の疎な星の光を時々曇らせているばかりであった。
が、その内に眼の下の部落からは、思いもよらない火事の煙が、風の断えた中空へ一すじまっ直に上り始めた。
老人はその煙の中に立ち昇る火の粉を眺めても、やはり膝を抱きながら、気楽そうに小声の歌を唱って、一向驚くらしい気色も見せなかった。
物静な春の夜は、藪木の花のかすかな匀を柔かく靄に包んだまま、ここでもただ梟の声が、ちょうど山その物の吐息のように、一天の疎な星の光を時々曇らせているばかりであった。
が、その内に眼の下の部落からは、思いもよらない火事の煙が、風の断えた中空へ一すじまっ直に上り始めた。
老人はその煙の中に立ち昇る火の粉を眺めても、やはり膝を抱きながら、気楽そうに小声の歌を唱って、一向驚くらしい気色も見せなかった。