しかし机には向ふにしても、思ひの外ペンは進まなかつた。
彼女はぼんやり頬杖をついて、炎天の松林の蝉の声に、我知れず耳を傾けてゐる彼女自身を見出し勝ちであつた。
所が残暑が初秋へ振り変らうとする時分、夫は或日会社の出がけに、汗じみた襟を取変へようとした。
しかし机には向ふにしても、思ひの外ペンは進まなかつた。
彼女はぼんやり頬杖をついて、炎天の松林の蝉の声に、我知れず耳を傾けてゐる彼女自身を見出し勝ちであつた。
所が残暑が初秋へ振り変らうとする時分、夫は或日会社の出がけに、汗じみた襟を取変へようとした。