あいにくの吹き降りで、不二見村の往還から寺の門まで行く路が、文字通りくつを没するほどぬかっていたが、その春雨にぬれた大覇王樹が、青い杓子をべたべたのばしながら、もの静かな庫裡を後ろにして、夏目先生の「草枕」の一節を思い出させたのは、今でも歴々と覚えている。
それから急な石段を墓の所へ登ると、菫がたくさん咲いていた。
いや、墓の上にも、誰がやったのだか、その菫を束にしたのが二つ三つ載せてあった。
あいにくの吹き降りで、不二見村の往還から寺の門まで行く路が、文字通りくつを没するほどぬかっていたが、その春雨にぬれた大覇王樹が、青い杓子をべたべたのばしながら、もの静かな庫裡を後ろにして、夏目先生の「草枕」の一節を思い出させたのは、今でも歴々と覚えている。
それから急な石段を墓の所へ登ると、菫がたくさん咲いていた。
いや、墓の上にも、誰がやったのだか、その菫を束にしたのが二つ三つ載せてあった。