一山の蝉の声の中に埋れながら、自分は昔、春雨にぬれているこの墓を見て、感に堪えたということがなんだかうそのような心もちがした。
と同時にまた、なんだか地下の樗牛に対してきのどくなような心もちがした。
不二山と、大蘇鉄と、そうしてこの大理石の墓と――自分は十年ぶりで「わが袖の記」を読んだのとは、全く反対な索漠さを感じて、匆々竜華寺の門をあとにした。
一山の蝉の声の中に埋れながら、自分は昔、春雨にぬれているこの墓を見て、感に堪えたということがなんだかうそのような心もちがした。
と同時にまた、なんだか地下の樗牛に対してきのどくなような心もちがした。
不二山と、大蘇鉄と、そうしてこの大理石の墓と――自分は十年ぶりで「わが袖の記」を読んだのとは、全く反対な索漠さを感じて、匆々竜華寺の門をあとにした。