それが懐へ手を入れたかと思ふと、甘栗を一つつまみ出して、割るが早いか口へ入れる、口へ入れたと思ふと、又懐へ手を入れて、つまみ出すが早いか割つて食ふ。
しかもその間中、眼は終始一貫して、寸分も舞台を離れない。
自分はこの視覚と味覚との敏捷な使ひ分けに感心して、暫くはその男の横顔ばかり眺めてゐたが、とうとうしまひに彼自身はどちらを真剣にやつてゐる心算だか、尋いて見たいやうな気がして来た。
それが懐へ手を入れたかと思ふと、甘栗を一つつまみ出して、割るが早いか口へ入れる、口へ入れたと思ふと、又懐へ手を入れて、つまみ出すが早いか割つて食ふ。
しかもその間中、眼は終始一貫して、寸分も舞台を離れない。
自分はこの視覚と味覚との敏捷な使ひ分けに感心して、暫くはその男の横顔ばかり眺めてゐたが、とうとうしまひに彼自身はどちらを真剣にやつてゐる心算だか、尋いて見たいやうな気がして来た。