現に自分の隣なぞにも、白粉をつけた骨と皮ばかりの老夫人が、金の指環をはめて金の時計の鎖を下げて、金の帯留の金物をして、その上にもまだ慊らず、歯にも一面に金を入れて、(これは欠伸をした時に見えたのである。
端然として控へてゐた。
が、前に歌舞伎座の立見をした時とは異なつて、今夜は見物の紳士淑女より、シオパンやシユウベルトの方が面白かつたから、それ以上自分はこの白粉と金とに埋つてゐる老夫人に、注意を払はなかつた。
現に自分の隣なぞにも、白粉をつけた骨と皮ばかりの老夫人が、金の指環をはめて金の時計の鎖を下げて、金の帯留の金物をして、その上にもまだ慊らず、歯にも一面に金を入れて、(これは欠伸をした時に見えたのである。
端然として控へてゐた。
が、前に歌舞伎座の立見をした時とは異なつて、今夜は見物の紳士淑女より、シオパンやシユウベルトの方が面白かつたから、それ以上自分はこの白粉と金とに埋つてゐる老夫人に、注意を払はなかつた。