するとそこの入口に、黒い背広の下へ赤いチヨツキを着た、背の低い人が佇んで、袴羽織の連れと一しよに金口の煙草を吸つてゐた。
久米はその人の姿を見ると、我々の耳へ口をつけるやうにして、「谷崎潤一郎だぜ」と教へてくれた。
自分と成瀬とはその人の前を通りながら、この有名な耽美主義の作家の顔を、偸むやうにそつと見た。
するとそこの入口に、黒い背広の下へ赤いチヨツキを着た、背の低い人が佇んで、袴羽織の連れと一しよに金口の煙草を吸つてゐた。
久米はその人の姿を見ると、我々の耳へ口をつけるやうにして、「谷崎潤一郎だぜ」と教へてくれた。
自分と成瀬とはその人の前を通りながら、この有名な耽美主義の作家の顔を、偸むやうにそつと見た。