自分と成瀬とはその人の前を通りながら、この有名な耽美主義の作家の顔を、偸むやうにそつと見た。
それは動物的な口と、精神的な眼とが、互に我を張り合つてゐるやうな、特色のある顔だつた。
我々は喫煙室の長椅子に腰を下して、一箱の敷島を吸ひ合ひながら、谷崎潤一郎論を少しやつた。
自分と成瀬とはその人の前を通りながら、この有名な耽美主義の作家の顔を、偸むやうにそつと見た。
それは動物的な口と、精神的な眼とが、互に我を張り合つてゐるやうな、特色のある顔だつた。
我々は喫煙室の長椅子に腰を下して、一箱の敷島を吸ひ合ひながら、谷崎潤一郎論を少しやつた。