従つて彼等の作品には、常に 〔Ah ! Seigneur, donnezmoi la force et le courage/ De contempler mon coeur et mon corps sans de'gou^t !〕 と云ふせつぱつまつた嘆声が、瘴気の如く纏綿してゐた。
我々が彼等の耽美主義から、厳粛な感激を浴びせられるのは、実にこの「地獄のドン・ジユアン」のやうな冷酷な心の苦しみを見せつけられるからである。
しかし谷崎氏の耽美主義には、この動きのとれない息苦しさの代りに、余りに享楽的な余裕があり過ぎた。