寝室は平生トルストイが、書斎に定めてゐる一室だつた。
大きな書架、龕の中の半身像、三四枚の肖像の額、壁にとりつけた牡鹿の頭、――彼の周囲にはそれらの物が、蝋燭の光に照らされながら、少しも派手な色彩のない、冷かな空気をつくつてゐた。
が、それにも関らず、単に独りになつたと云ふ事が、兎に角今夜のトウルゲネフには、不思議な程嬉しい気がするのだつた。
寝室は平生トルストイが、書斎に定めてゐる一室だつた。
大きな書架、龕の中の半身像、三四枚の肖像の額、壁にとりつけた牡鹿の頭、――彼の周囲にはそれらの物が、蝋燭の光に照らされながら、少しも派手な色彩のない、冷かな空気をつくつてゐた。
が、それにも関らず、単に独りになつたと云ふ事が、兎に角今夜のトウルゲネフには、不思議な程嬉しい気がするのだつた。