と、きめつけると、車掌も不審そうな顔をして、「大勢さんのように思いましたが。
と、答えた事があるそうです。
そのほかまだ数え立てれば、砲兵工廠の煙突の煙が、風向きに逆って流れたり、撞く人もないニコライの寺の鐘が、真夜中に突然鳴り出したり、同じ番号の電車が二台、前後して日の暮の日本橋を通りすぎたり、人っこ一人いない国技館の中で、毎晩のように大勢の喝采が聞えたり、――所謂「自然の夜の側面」は、ちょうど美しい蛾の飛び交うように、この繁華な東京の町々にも、絶え間なく姿を現しているのです。
と、きめつけると、車掌も不審そうな顔をして、「大勢さんのように思いましたが。
と、答えた事があるそうです。
そのほかまだ数え立てれば、砲兵工廠の煙突の煙が、風向きに逆って流れたり、撞く人もないニコライの寺の鐘が、真夜中に突然鳴り出したり、同じ番号の電車が二台、前後して日の暮の日本橋を通りすぎたり、人っこ一人いない国技館の中で、毎晩のように大勢の喝采が聞えたり、――所謂「自然の夜の側面」は、ちょうど美しい蛾の飛び交うように、この繁華な東京の町々にも、絶え間なく姿を現しているのです。