そう云えばもう一つ、その頭の上の盆提灯が、豊かな胴へ秋草の模様をほんのりと明く浮かせた向うに、雨上りの空がむら雲をだだ黒く一面に乱していたのも、やはり妙に身にしみて、忘れる事が出来ません。
そこで肝腎の話と云うのは、その新蔵と云う若主人が(ほかに差障りがあるといけませんから、仮にこう呼んで置きましょう。
二十三の夏にあった事で、当時本所一つ目辺に住んでいた神下しの婆の所へ、ちと心配な筋があって、伺いを立てに行ったと云う、それが抑々の発端なのです。
そう云えばもう一つ、その頭の上の盆提灯が、豊かな胴へ秋草の模様をほんのりと明く浮かせた向うに、雨上りの空がむら雲をだだ黒く一面に乱していたのも、やはり妙に身にしみて、忘れる事が出来ません。
そこで肝腎の話と云うのは、その新蔵と云う若主人が(ほかに差障りがあるといけませんから、仮にこう呼んで置きましょう。
二十三の夏にあった事で、当時本所一つ目辺に住んでいた神下しの婆の所へ、ちと心配な筋があって、伺いを立てに行ったと云う、それが抑々の発端なのです。