そこで肝腎の話と云うのは、その新蔵と云う若主人が(ほかに差障りがあるといけませんから、仮にこう呼んで置きましょう。
二十三の夏にあった事で、当時本所一つ目辺に住んでいた神下しの婆の所へ、ちと心配な筋があって、伺いを立てに行ったと云う、それが抑々の発端なのです。
何でも六月の上旬ある日、新蔵はあの界隈に呉服屋を出している、商業学校時代の友だちを引張り出して、一しょに与兵衛鮨へ行ったのだそうですが、そこで一杯やっている内に、その心配な筋と云うのを問わず語りに話して聞かせると、その友だちの泰さんと云うのが急に真面目な顔をして、「じゃお島婆さんに見て貰い給え。