――こう云う調子で、啣え楊枝のまま与兵衛を出ると、麦藁帽子に梅雨晴の西日をよけて、夏外套の肩を並べながら、ぶらりとその神下しの婆の所へ出かけたと云います。
ここでその新蔵の心配な筋と云うのを御話しますと、家に使っていた女中の中に、お敏と云う女があって、それが新蔵とは一年越互に思い合っていたのですが、どうした訣か去年の暮に叔母の病気を見舞いに行ったぎり、音沙汰もなくなってしまったのです。
驚いたは新蔵ばかりでなく、このお敏に目をかけていた新蔵の母親も心配して、請人を始め伝手から伝手へ、手を廻して探しましたが、どうしても行く方が分りません。