ここでその新蔵の心配な筋と云うのを御話しますと、家に使っていた女中の中に、お敏と云う女があって、それが新蔵とは一年越互に思い合っていたのですが、どうした訣か去年の暮に叔母の病気を見舞いに行ったぎり、音沙汰もなくなってしまったのです。
驚いたは新蔵ばかりでなく、このお敏に目をかけていた新蔵の母親も心配して、請人を始め伝手から伝手へ、手を廻して探しましたが、どうしても行く方が分りません。
やれ、看護婦になっているのを見たの、やれ、妾になったと云う噂があるの、と、取沙汰だけはいろいろあっても、さて突きつめた所になると、皆目どうなったか知れないのです。