お敏を隠した発頭人。
まずこいつをとっちめて、――と云う権幕でしたから、新蔵はずいと上りざまに、夏外套を脱ぎ捨てると、思わず止めようとしたお敏の手へ、麦藁帽子を残したなり、昂然と次の間へ通りました。
が、可哀そうなのは後に残ったお敏で、これは境の襖の襖側にぴったりと身を寄せたまま、夏外套や麦藁帽子の始末をしようと云う方角もなく、涙ぐんだ涼しい眼に、じっと天井を仰ぎながら、華奢な両手を胸へ組んで、頻に何か祈念でも凝らしているように見えたそうです。
お敏を隠した発頭人。
まずこいつをとっちめて、――と云う権幕でしたから、新蔵はずいと上りざまに、夏外套を脱ぎ捨てると、思わず止めようとしたお敏の手へ、麦藁帽子を残したなり、昂然と次の間へ通りました。
が、可哀そうなのは後に残ったお敏で、これは境の襖の襖側にぴったりと身を寄せたまま、夏外套や麦藁帽子の始末をしようと云う方角もなく、涙ぐんだ涼しい眼に、じっと天井を仰ぎながら、華奢な両手を胸へ組んで、頻に何か祈念でも凝らしているように見えたそうです。