そう思うと、僕もすっかりつまされてしまってね、すぐに待合をとも考えたんだが、婆の手前は御湯へ行くと云って、出て来るんだと聞いて見りゃ、川向うは少し遠すぎるし――と云ってほかに然るべき所もないから、よろしい、僕の所の二階を明渡しましょうって云ったんだが、余り恐れ入りますからとか何とか云って、どうしても承知しない。
もっともこりゃ気兼ねをするのも、無理はないと思ったから、じゃどこかにお前さんの方に、心当りの場所でもありますかって尋ねると、急に赤い顔をしたがね。
小さな声で、明日の夕方、近所の石河岸まで若旦那様に来て頂けないでしょうかと云うんだ。