その姿を煤煙と電燈の光との中に眺めた時、もう窓の外が見る見る明くなつて、そこから土の匀や枯草の匀や水の匀が冷かに流れこんで來なかつたなら、漸く咳きやんだ私は、この見知らない小娘を頭ごなしに叱りつけてでも、又元の通り窓の戸をしめさせたのに相違なかつたのである。
しかし汽車はその時分には、もう安安と隧道を辷りぬけて、枯草の山と山との間に挾まれた、或貧しい町はづれの踏切りに通りかかつてゐた。
踏切りの近くには、いづれも見すぼらしい藁屋根や瓦屋根がごみごみと狹苦しく建てこんで、踏切り番が振るのであらう、唯一旒のうす白い旗が懶げに暮色を搖つてゐた。