猪熊のばばに別れた太郎は、時々扇で風を入れながら、日陰も選ばず、朱雀の大路を北へ、進まない歩みをはこんだ。
日中の往来は、人通りもきわめて少ない。
栗毛の馬に平文の鞍を置いてまたがった武士が一人、鎧櫃を荷なった調度掛けを従えながら、綾藺笠に日をよけて、悠々と通ったあとには、ただ、せわしない燕が、白い腹をひらめかせて、時々、往来の砂をかすめるばかり、板葺、檜皮葺の屋根の向こうに、むらがっているひでり雲も、さっきから、凝然と、金銀銅鉄を熔かしたまま、小ゆるぎをするけしきはない。
猪熊のばばに別れた太郎は、時々扇で風を入れながら、日陰も選ばず、朱雀の大路を北へ、進まない歩みをはこんだ。
日中の往来は、人通りもきわめて少ない。
栗毛の馬に平文の鞍を置いてまたがった武士が一人、鎧櫃を荷なった調度掛けを従えながら、綾藺笠に日をよけて、悠々と通ったあとには、ただ、せわしない燕が、白い腹をひらめかせて、時々、往来の砂をかすめるばかり、板葺、檜皮葺の屋根の向こうに、むらがっているひでり雲も、さっきから、凝然と、金銀銅鉄を熔かしたまま、小ゆるぎをするけしきはない。