すばやく彼を駆けぬけた狩犬の一頭が、友を集めるように高くほえると、そこに狂っていた犬の群れは、ことごとく相呼び相答えて、一度に狺々の声をあげながら、見る間に彼を、その生きて動く、なまぐさい毛皮の渦巻きの中へ巻きこんだ。
深夜、この小路に、こうまで犬の集まっていたのは、もとよりいつもある事ではない。
次郎は、この廃都をわが物顔に、十二十と頭をそろえて、血のにおいに飢えて歩く、獰猛な野犬の群れが、ここに捨ててあった疫病の女を、宵のうちから餌食にして、互いに牙をかみながら、そのちぎれちぎれな肉や骨を、奪い合っているところへ、来たのである。