それは日ごろ見る兄ではない。
いや、今しがた馬を飛ばせて、いっさんに走り去った兄とさえ、変わっている。
険しくせまった眉に、かたく、下くちびるをかんだ歯に、そうしてまた、怪しく熱している片目に、次郎は、ほとんど憎悪に近い愛が、――今まで知らなかった、不思議な愛が燃え立っているのを見たのである。
それは日ごろ見る兄ではない。
いや、今しがた馬を飛ばせて、いっさんに走り去った兄とさえ、変わっている。
険しくせまった眉に、かたく、下くちびるをかんだ歯に、そうしてまた、怪しく熱している片目に、次郎は、ほとんど憎悪に近い愛が、――今まで知らなかった、不思議な愛が燃え立っているのを見たのである。