けれどもくたびれた儘で、安閑と宿屋へ尻を据ゑてもゐられないから、その日の暮方その紳士と三人で、高崎の停車場まで下つて来たが、さて停車場へ来てみると、我々の財布には上野までの汽車賃さへ残つてゐない。
そこで甚恐縮しながら、その紳士に事情を話して、確か一円二十銭ばかり借用した。
以上の如く伊香保と云つても、溪山の風光は更に覚えてゐないが、この紳士の記憶だけは温泉の話が出る度に必ず心に浮んで来る。
けれどもくたびれた儘で、安閑と宿屋へ尻を据ゑてもゐられないから、その日の暮方その紳士と三人で、高崎の停車場まで下つて来たが、さて停車場へ来てみると、我々の財布には上野までの汽車賃さへ残つてゐない。
そこで甚恐縮しながら、その紳士に事情を話して、確か一円二十銭ばかり借用した。
以上の如く伊香保と云つても、溪山の風光は更に覚えてゐないが、この紳士の記憶だけは温泉の話が出る度に必ず心に浮んで来る。