母なら奥さんと話しながら、しかも子供を退屈させない丈の手腕があると思つたからである。
すると奥さんは懐から鏡を出して、それを千枝ちやんに渡しながら「この子はかうやつて置きさへすれば、決して退屈しないんです」と云つた。
何故だらうと思つて聞いて見ると、この奥さんの良人が逗子の別荘に病を養つてゐた時分、奥さんは千枝ちやんをつれて、一週間に二三度宛東京逗子間を往復したが、千枝ちやんは汽車の中でその度に退屈し切つてしまふ。
母なら奥さんと話しながら、しかも子供を退屈させない丈の手腕があると思つたからである。
すると奥さんは懐から鏡を出して、それを千枝ちやんに渡しながら「この子はかうやつて置きさへすれば、決して退屈しないんです」と云つた。
何故だらうと思つて聞いて見ると、この奥さんの良人が逗子の別荘に病を養つてゐた時分、奥さんは千枝ちやんをつれて、一週間に二三度宛東京逗子間を往復したが、千枝ちやんは汽車の中でその度に退屈し切つてしまふ。