久しぶりに漱石先生の所へ行つたら、先生は書斎のまん中に坐つて、腕組みをしながら、何か考へてゐた。
「先生、どうしました」と云ふと「今、護国寺の三門で、運慶が仁王を刻んでゐるのを見て来た所だよ」と云ふ返事があつた。
この忙しい世の中に、運慶なんぞどうでも好いと思つたから、浮かない先生をつかまへて、トルストイとか、ドストエフスキイとか云ふ名前のはいる、六づかしい議論を少しやつた。
久しぶりに漱石先生の所へ行つたら、先生は書斎のまん中に坐つて、腕組みをしながら、何か考へてゐた。
「先生、どうしました」と云ふと「今、護国寺の三門で、運慶が仁王を刻んでゐるのを見て来た所だよ」と云ふ返事があつた。
この忙しい世の中に、運慶なんぞどうでも好いと思つたから、浮かない先生をつかまへて、トルストイとか、ドストエフスキイとか云ふ名前のはいる、六づかしい議論を少しやつた。