昨日は泣き声を聞いているのも堪えられない気がした隣室の赤児、――それが今では何物よりも、敏子の興味を動かすのである。
しかもその興味を満足させれば、反って苦しみを新たにするのも、はっきりわかってはいるのである。
これは小さな動物が、コブラの前では動けないように、敏子の心もいつのまにか、苦しみそのものの催眠作用に捉われてしまった結果であろうか?
昨日は泣き声を聞いているのも堪えられない気がした隣室の赤児、――それが今では何物よりも、敏子の興味を動かすのである。
しかもその興味を満足させれば、反って苦しみを新たにするのも、はっきりわかってはいるのである。
これは小さな動物が、コブラの前では動けないように、敏子の心もいつのまにか、苦しみそのものの催眠作用に捉われてしまった結果であろうか?