或る財産家の息子が、小間使だつたと記憶してゐるが。
兎に角一人の田舎者の少女と恋に陥つたところ、母親は別に何とも言はないで、その少女と婚約さす、さうしておいて、花やかな社交界に二人をドシドシと出入させた。
賑やかな交際社会へ入つてみると、今まで綺麗だと思つてゐた田舎者の少女も、美しい令嬢、夫人たちに伍すると非常に見劣りがして、その上、礼儀、作法、人品、言葉遣ひなど種々の点で、これでは結婚後不便だらうと思はれるやうなあらが沢山眼に見えてきたので、息子の方から破約を申出たといふのである。
或る財産家の息子が、小間使だつたと記憶してゐるが。
兎に角一人の田舎者の少女と恋に陥つたところ、母親は別に何とも言はないで、その少女と婚約さす、さうしておいて、花やかな社交界に二人をドシドシと出入させた。
賑やかな交際社会へ入つてみると、今まで綺麗だと思つてゐた田舎者の少女も、美しい令嬢、夫人たちに伍すると非常に見劣りがして、その上、礼儀、作法、人品、言葉遣ひなど種々の点で、これでは結婚後不便だらうと思はれるやうなあらが沢山眼に見えてきたので、息子の方から破約を申出たといふのである。