やがて、時刻をはかつて、先生は、応接室の扉をあけた。
中へはいつて、おさへてゐたノツブを離すのと、椅子にかけてゐた四十恰好の婦人の立上つたのとが、殆、同時である。
客は、先生の判別を超越した、上品な鉄御納戸の単衣を着て、それを黒の絽の羽織が、胸だけ細く剰した所に、帯止めの翡翠を、涼しい菱の形にうき上らせてゐる。
やがて、時刻をはかつて、先生は、応接室の扉をあけた。
中へはいつて、おさへてゐたノツブを離すのと、椅子にかけてゐた四十恰好の婦人の立上つたのとが、殆、同時である。
客は、先生の判別を超越した、上品な鉄御納戸の単衣を着て、それを黒の絽の羽織が、胸だけ細く剰した所に、帯止めの翡翠を、涼しい菱の形にうき上らせてゐる。