芥川龍之介 『槍ヶ嶽紀行』 三十分の後、とうとう私はたつた一人、山路を喘いで行く旅人になつた。 うす日に蒸された峠の空気は、無気味な静寂を孕んでゐた。 馬糞にたかつてゐる蛇の目蝶と蓙を煽つて行く私、――それがこの急な路の上に、生きて動いてゐるすべてであつた。 芥川龍之介の名言・名文を読む 用例を検索する → シェア