かう云ふ土蔵のまん中に、無尽燈は見世へとられましたから、ぼんやり行燈がともつてゐる、――その昔じみた行燈の光に、母は振り出しの袋を縫ひ、兄は小さい古机に例の英語の読本か何か調べてゐるのでございます。
それには変つたこともございません。
が、ふと母の顔を見ると、母は針を動かしながら、伏し眼になつた睫毛の裏に涙を一ぱいためて居ります。
かう云ふ土蔵のまん中に、無尽燈は見世へとられましたから、ぼんやり行燈がともつてゐる、――その昔じみた行燈の光に、母は振り出しの袋を縫ひ、兄は小さい古机に例の英語の読本か何か調べてゐるのでございます。
それには変つたこともございません。
が、ふと母の顔を見ると、母は針を動かしながら、伏し眼になつた睫毛の裏に涙を一ぱいためて居ります。