その後父母の死んだ時にも、涙一つ落さなかつた兄、――永年政治に奔走してから、癲狂院へ送られる迄、一度も弱みを見せなかつた兄、――さう云ふ兄がこの時だけは啜り泣きを始めたのでございます。
これは興奮し切つた母にも、意外だつたのでございませう。
母は長い溜息をしたぎり、申しかけた言葉も申さずに、もう一度枕をしてしまひました。
その後父母の死んだ時にも、涙一つ落さなかつた兄、――永年政治に奔走してから、癲狂院へ送られる迄、一度も弱みを見せなかつた兄、――さう云ふ兄がこの時だけは啜り泣きを始めたのでございます。
これは興奮し切つた母にも、意外だつたのでございませう。
母は長い溜息をしたぎり、申しかけた言葉も申さずに、もう一度枕をしてしまひました。