(中略)
「さる程に(中略)徳川の家中にては、弥増す敵意と猜念とをもて、上方の空を眺めつつ、変心測られぬ秀吉、いつ攻め来んも知り難しと、衆情枕をさへ安んぜざりし折柄、とりどりの流言伝はり、中にも秀吉於義丸等を殺すべしとの風聞は、痛く一家の人心をぞ刺しにける。
(中略)家康は流石に忍刻の人、冷然として言へらく、『秀康今は我子にあらで、秀吉が子なり。
(中略)
「さる程に(中略)徳川の家中にては、弥増す敵意と猜念とをもて、上方の空を眺めつつ、変心測られぬ秀吉、いつ攻め来んも知り難しと、衆情枕をさへ安んぜざりし折柄、とりどりの流言伝はり、中にも秀吉於義丸等を殺すべしとの風聞は、痛く一家の人心をぞ刺しにける。
(中略)家康は流石に忍刻の人、冷然として言へらく、『秀康今は我子にあらで、秀吉が子なり。