始はかやうな淫な事を、ものものしう詮議立てするが、おのれにも恥しうて、うちつけに尋ねようは元より、「ろおれんぞ」の顔さへまさかとは見られぬ程であつたが、或時「さんた・るちや」の後の庭で、「ろおれんぞ」へ宛てた娘の艶書を拾うたに由つて、人気ない部屋にゐたを幸、「ろおれんぞ」の前にその文をつきつけて、嚇しつ賺しつ、さまざまに問ひただいた。
なれど「ろおれんぞ」は唯、美しい顔を赤らめて、「娘は私に心を寄せましたげでござれど、私は文を貰うたばかり、とんと口を利いた事もござらぬ」と申す。
なれど世間のそしりもある事でござれば、「しめおん」は猶も押して問ひ詰つたに、「ろおれんぞ」はわびしげな眼で、ぢつと相手を見つめたと思へば、「私はお主にさへ、嘘をつきさうな人間に見えるさうな」と、咎めるやうに云ひ放つて、とんと燕か何ぞのやうに、その儘つと部屋を立つて行つてしまうた。