したが、「でうす」無量無辺の御愛憐は、その都度「ろおれんぞ」が一命を救はせ給うたのみか、施物の米銭のない折々には、山の木の実、海の魚介など、その日の糧を恵ませ給ふのが常であつた。
由つて「ろおれんぞ」も、朝夕の祈は「さんた・るちや」に在つた昔を忘れず、手くびにかけた「こんたつ」も、青玉の色を変へなかつたと申す事ぢや。
なんの、それのみか、夜毎に更闌けて人音も静まる頃となれば、この少年はひそかに町はづれの非人小屋を脱け出いて、月を踏んでは住み馴れた「さんた・るちや」へ、御主「ぜす・きりしと」の御加護を祈りまゐらせに詣でて居つた。