沙室屋の珊瑚樹を詐ったのも甚内です。
備前宰相の伽羅を切ったのも、甲比丹「ぺれいら」の時計を奪ったのも、一夜に五つの土蔵を破ったのも、八人の参河侍を斬り倒したのも、――そのほか末代にも伝わるような、稀有の悪事を働いたのは、いつでも阿媽港甚内です。
その甚内は今わたしの前に、網代の笠を傾けながら、薄明るい雪路を歩いている。
沙室屋の珊瑚樹を詐ったのも甚内です。
備前宰相の伽羅を切ったのも、甲比丹「ぺれいら」の時計を奪ったのも、一夜に五つの土蔵を破ったのも、八人の参河侍を斬り倒したのも、――そのほか末代にも伝わるような、稀有の悪事を働いたのは、いつでも阿媽港甚内です。
その甚内は今わたしの前に、網代の笠を傾けながら、薄明るい雪路を歩いている。