何でも村田君の話によると、このホテルを私の宿にしたのは、大阪の社の沢村君の考案によったものだそうである。
処がこの精悍な主人は、芥川龍之介には宿を貸しても、万一暗殺された所が、得にはならないとでも思ったものか、玄関の前の部屋の外には、生憎明き間はごわせんと云う。
それからその部屋へ行って見ると、ベッドだけは何故か二つもあるが、壁が煤けていて、窓掛が古びていて、椅子さえ満足なのは一つもなくて、――要するに金玉均の幽霊でもなければ、安住出来る様な明き間じゃない。
何でも村田君の話によると、このホテルを私の宿にしたのは、大阪の社の沢村君の考案によったものだそうである。
処がこの精悍な主人は、芥川龍之介には宿を貸しても、万一暗殺された所が、得にはならないとでも思ったものか、玄関の前の部屋の外には、生憎明き間はごわせんと云う。
それからその部屋へ行って見ると、ベッドだけは何故か二つもあるが、壁が煤けていて、窓掛が古びていて、椅子さえ満足なのは一つもなくて、――要するに金玉均の幽霊でもなければ、安住出来る様な明き間じゃない。